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2014年12月16日 (火)

本棚の旅■あのころの風景/田渕由美子

書 名/あのころの風景
著者名/田渕由美子
出版元/集英社
判 型/新書判
定 価/360円
シリーズ名/りぼんマスコットコミックス
初版発行日/1982年4月20日
収録作品/あのころの風景、聖夜・粉雪ふりしきる、聖★グリーンサラダ、マルメロ・ジャムをひとすくい

初出:あのころの風景/集英社「りぼん」昭和56年2月号別冊ふろく、聖夜・粉雪ふりしきる/集英社「りぼん」昭和54年12月号、聖★グリーンサラダ/集英社「りぼん」昭和50年12月号、マルメロ・ジャムをひとすくい/集英社「りぼん」昭和50年3月号

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「りぼんマスコットコミックス」の田渕由美子傑作集は『雪やこんこん』以来年一冊ペースで刊行されていた(ちなみに2冊目の『クロッカス咲いたら』から『夏からの手紙』までは7か月(実質6か月)の刊行だった)が、本書『あのころの風景』は前巻『夏からの手紙』から2年ぶりの刊行となった。また前巻まで表示されていた「田渕由美子傑作集」が本書にはない。
 収録作品も表題作『あのころの風景』が昭和56年作品であることをのぞくと『聖★グリーンサラダ』『マルメロ・ジャムをひとすくい』が昭和50年作品と、古い作品を収録している。
『あのころの風景』はそれまでの田渕作品同様の展開ではあるが、ラストにいたってリアルな雰囲気を持ち込んできている。たいていはそういうものだし、漫画のような結末を経験することの方が少ないだろうが、田渕作品でそれを見るのは意外が気もした。
『聖夜・粉雪ふりしきる』は田渕らしい作品といえばそうなのだが、昭和54年の作品ということを考えるとそれまでの作品の焼き直しのようにも思えてしまう。
『聖★グリーンサラダ』は亡くなった姉の夫と同居する主人公という設定の作品で、いま読むといろいろとギリギリな印象を受けてしまったりもするのですが…。
『マルメロ・ジャムをひとすくい』は海外が舞台の作品で、絵柄的には初期作品にも感じられる。

 田渕由美子はいまでも好きな作家のひとりには違いないのだけれど、結果として本書『あのころの風景』を最後に新作を読まなくなってしまった。
 ときどき、ふと読み返してみようかと思うことがあるのだが、もう長い間単行本を手に取っては見るものの、実際に読み返すことが出来ないことが何度もあった。読者としてのこちらの感性が変化してしていたこともあるのだろうが、70年代後半当時の世界観が、ちょっと胸が痛くなるような感覚で、読むのをためらってしまうようなところがあったように思う。今回「りぼんマスコットコミックス」を6冊読み返したのも、実際20数年ぶりではないかと思う。懐かしい友達に会って思い出話をしたような、そんな気分だった。

2014年12月15日 (月)

本棚の旅■夏からの手紙/田渕由美子

書 名/夏からの手紙
著者名/田渕由美子
出版元/集英社
判 型/新書判
定 価/340円
シリーズ名/りぼんマスコットコミックス
初版発行日/1980年7月20日
収録作品/夏からの手紙、あなたに…、雨の糸をつむいで、百日目のひゃくにちそう

初出:夏からの手紙/集英社「りぼん」昭和54年8月号、あなたに…/集英社「りぼん」昭和53年4月号、雨の糸をつむいで/集英社「りぼん」昭和53年6月号、百日目のひゃくにちそう/集英社「りぼん」昭和53年9月号

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「りぼんマスコットコミックス」の田渕由美子傑作集、第5巻。カバー裏表紙の折り返しには「キャンパス・ロマン」の表記もある。というのも収録された作品すべての登場人物たちが大学生なのだ。表題作の『夏からの手紙』は中学生時代に話が始まり、高校3年間はサラッとすっ飛ばして大学生になってから本格的なストーリーが展開するというもの。この登場人物の年齢設定にも関連しているのだと思われるが、作者も絵柄に変化をつけようとしている雰囲気が感じられる。とはいえ基本的に初期から続く内向的な性格や勘違い・すれ違いのストーリーというのは変わっていないので、逆に違和感も出てきてしまうという部分はある。
 傑作集4『林檎ものがたり』で巻末に収録されていた『菜の花キャベツがささやいて』がそれまでの田渕作品全体のその後を描いたような作品であることを考えると、そこで一端気持ちを切り換えていたのかもしれない。「まゆこ」のような決まって登場する主人公の友達や髭面の男子といった「おなじみの顔」も敢えて描いていないと思われる(似てるけど明らかに描き方を変えているという印象)。これは『あなたに…』に登場する綱ちゃんという登場人物に顕著で、それまでの田渕作品にはみられなかったキャラクターだ。また『雨の糸をつむいで』『百日目のひゃくにちそう』に登場する男子もそれまで描かれてきた男性主人公とは違う性格に思える。
 こういった変化は作家としては当然だし、ファンや読者も一般的には受け入れていくものだと思うが、田渕作品に関して言うならば、中学・高校生を主人公にしたピュアな恋愛物語のままであった方がよかったような気がしないでもない。少なくとも個人的にはこの『夏からの手紙』以降田渕作品にはあまり関心を持たなくなってしまった。
 読者の成長に合わせて登場人物の年齢も上がったのであれば、その恋愛内容も変化していかなければ共感はえられなかったのではないかと思う。もちろんそれは作者だけの問題ではなく「りぼん」という発表媒体の問題もあったのだとは思うが…。
『百日目のひゃくにちそう』のラストシーン(ストーリーではなくビジュアル)も、それまでの作品とはちょっと違っていて、妙に印象に残る。このラストのワンカットが田渕の変化の現れだったのかもしれない。

本棚の旅■林檎ものがたり/田渕由美子

書 名/林檎ものがたり
著者名/田渕由美子
出版元/集英社
判 型/新書判
定 価/340円
シリーズ名/りぼんマスコットコミックス
初版発行日/1979年7月19日
収録作品/林檎ものがたり、ブルー・グリーン・メロディ、菜の花キャベツがささやいて

初出:林檎ものがたり/集英社「りぼん」昭和52年10月号~12月号、ブルー・グリーン・メロディ/集英社「りぼん」昭和54年1月号、菜の花キャベツがささやいて/集英社「りぼん」昭和54年4月号

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 本書には『フランス窓便り』と同じく3話から成るオムニバス形式の『林檎ものがたり』と短編2作が収録されている。
『林檎ものがたり』のエピソード1は、珍しく男性が主人公のストーリー。好きになった女性に彼氏がいて、それが実は兄弟だったとか、やはり夫婦だったとか勘違いやすれ違いの展開はいつもの通り。エピソード2は『フランス窓便り』のパート2に似た印象を受ける。これまで脇役で何度か登場してきた「まゆこ」が主役のエピソードでもある。エピソード3も林檎を印象的に使ってはいるのだけれど、ちょっと強引な気がしなくもなかったり…。雪だるまの目に林檎を使うというのはいいと思いますけども。
『ブルー・グリーン・メロディ』はアメリカを舞台にした作品で『ポーリー・ポエットそばかすななつ』に設定が似ている。リメイクということではないが、同じアイデアの別作品といったところか。
 実は最後に収録された『菜の花キャベツがささやいて』がもっとも注目に値する作品と言っていいだろう。というのもお互い大学生で新婚という主人公カップルが登場するのだが、これまで描かれてきたカップルたちのその後を描いたような作品になっているからだ。ハッピーエンドのあとでもあの主人公たちはその後どうなったのだろうと、ふと気になったりすると思うが、本作を読むとなるほどこんな風になっているのね、と納得しちゃうと思う。それがどの作品のその後かどうかではなく、田渕作品全体のその後として受け取れるところがまたすごいと思ってしまうのですが…。
 この頃の田渕由美子は「りぼん」の看板作家になっていて、本書収録作品では『林檎ものがたり』のエピソード3以外は扉と冒頭数ページはカラー原稿となっている。
 70年代末、「りぼん」の愛読者に東大男子がいるということが話題になったりもしたのだが、本書に収録された作品の登場人物たちはみな大学生。本来小学女子向けを対象にしていた雑誌であったはずなので、相当に掲載作品も実際の読者年齢も引きあがっていたことになる。小学生の頃から読んでいた読者がそのまま成長していったこともあるだろうが、なにより作家側も高校生くらいでデビューして大学生や社会人になり、自分と同年代の主人公を描いていたということが大きかったような気がする。

2014年12月14日 (日)

本棚の旅■フランス窓便り/田渕由美子

書 名/フランス窓便り
著者名/田渕由美子
出版元/集英社
判 型/新書判
定 価/340円
シリーズ名/りぼんマスコットコミックス
初版発行日/1978年7月10日
収録作品/フランス窓だより、白いカップにお茶の色、ローズ・ラベンダー・ポプリ

初出:フランス窓だより/集英社「りぼん」昭和51年6月号~8月号、白いカップにお茶の色/集英社「りぼん」昭和52年6月号、ローズ・ラベンダー・ポプリ/集英社「りぼん」昭和52年8月号

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「りぼんマスコットコミックス」の作品集3冊目は3つのエピソードから成る『フランス窓便り』で、この作品は田渕の代表作でもあり、読みきり作品しか描いてこなかった田渕の連載(3回ではあるが)作品でもある。
 フランス窓のある一軒家を3人の女子大生が共同で借りているという設定で、その3人それぞれの恋物語を1話ずつ描いた3部作。タイプの違う3人の恋の行方が気になる作品です。
『白いカップにお茶の色』は初期作品『ただいま契約期間中!』のリメイクといってもいい作品で、義理の姉弟の恋物語。
『ローズ・ラベンダー・ポプリ』は幼なじみの恋物語。この作品を読んだ同時期に、清原なつのの『花岡ちゃんの夏休み』を読んでいて、どうも印象がかぶってしまう。
 収録された作品はいずれも田渕の代表作となり得るもので、充実した一冊という印象すらある。連載の長編作品を描かない分、ストーリーと作画にじっくりと取り組んでもいたのだろうが、この時期はまさに脂の乗った状態だったともいえるだろう。
 勘違いやすれ違い、誤解、さらには言い出せない言葉の数々が恋の物語を味付けし、泣いたり怒ったりして最後には想いを伝えるハッピーエンド。こう言ってしまうとあまりにワンパターンな気がしないでもないが、読後のさわやかさやほんわかとした温かさが田渕の作品の人気の理由だったのではないかと思う。まあ、そこには独特な台詞回しもあったりするのだけれど。
 また田渕作品の特徴として言えるのは、優しく抱きしめるようなシーンはあってもキスなどもあまり描いていない印象があること。70年代後半といえばそろそろ少女漫画にもフィジカルな描写が目立ってきたころで、あくまでもプラトニックな、ピュアな恋愛を描いていたことも支持された理由なのかもしれない。
 冷静に考えてしまうと、本書に収録された作品の主人公たちは女子大生がほとんどなので、そりゃあ幼すぎるだろうと言えないこともないのだが、ほとんどの作品で幼さが魅力であり、本人はそれをコンプレックスに感じている主人公が登場しているので、違和感を感じなかったりする。もっとも絵柄的にもそれでいいんですけどね。
 今読み返してみると恋愛というメルヘンを描いていたのかなあと思うわけであります。

2014年12月13日 (土)

本棚の旅■クロッカス咲いたら/田渕由美子

書 名/クロッカス咲いたら
著者名/田渕由美子
出版元/集英社
判 型/新書判
定 価/340円
シリーズ名/りぼんマスコットコミックス
初版発行日/1977年7月10日
収録作品/クロッカス咲いたら、10年めの夏、やさしいかおりのする秋に、HAPPY BOXをあけたのは?、ポーリー・ポエットそばかすななつ

初出:クロッカス咲いたら/集英社「りぼん」昭和51年3月号、10年めの夏/集英社「りぼん」昭和46年夏休み増刊号、やさしいかおりのする秋に/集英社「りぼん」昭和51年11月号、HAPPY BOXをあけたのは?/集英社「りぼん」昭和48年10月増刊号、ポーリー・ポエットそばかすななつ/集英社「りぼん」昭和52年1月号

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 本書は田渕由美子の2冊目の単行本になる。『10年めの夏』『HAPPY BOXをあけたのは?』の2作は70年代前半の初期作品で、絵柄もまだ固まっていない印象だ。
 田渕の作品のなにを最初に読んだのかはっきり覚えていないのだけれど、この『クロッカス咲いたら』がそうだったのではないかと思う。かなり久しぶりに読んでみたが、収録された作品はどれも王道という印象のもの。また日本国内を舞台にした作品の多い田渕には珍しく、外国を舞台にしたものが2編(『HAPPY BOXをあけたのは?』『ポーリー・ポエットそばかすななつ』)含まれている。
 正直なところ表題作である『クロッカス咲いたら』はすぐに落ちも展開も読めてしまうところがあって、収録作品の中では一番印象が薄かったりする。まあ、憧れの男性に付き合っている彼女がいるらしいという勘違いやその彼女が実は…というのも王道であって、だからこそ「やっぱり」というところなのではあるけれども。
『HAPPY BOXをあけたのは?』はどこか竹宮恵子の作品のような匂いを感じる一編。絵柄的にはだいぶ固まってきている印象ではあるが、構成面ではまだもたついているような感じで惜しい。
『ポーリー・ポエットそばかすななつ』は映画『ローマの休日』に影響されたかのような作品なのだが、主人公ファーンの、ポーリーに対する印象の変わっていく辺りは田渕らしさが出ているだろう。もっともこの作品が収録作品中で一番最新のものだということを考えれば、なるほどというところではある。
 個人的に好きなのは『やさしいかおりのする秋に』だ。
 童話作家が登場する作品だが、そういえばこの頃の少女漫画には童話作家がよく出ていたような気がする。また個人的にも立原えりかの作品を読んだのも同じ時期で、童話というジャンルが流行っていたような気がしないでもない(立原えりかの作品は童話だけど少女漫画チックな世界観でしたよねえ)。
 手元にあるのは1977年12月10日発行の第4版。この年は田渕さんもそうとう印税収入があったのだろうと思います。

2014年12月12日 (金)

本棚の旅■雪やこんこん/田渕由美子

書 名/雪やこんこん
著者名/田渕由美子
出版元/集英社
判 型/新書判
定 価/340円
シリーズ名/りぼんマスコットコミックス(RMC-83)
初版発行日/1976年2月10日
収録作品/雪やこんこん、ハウスキーパー募集中、ただいま契約期間中!、夏色の花、ライム・ラブ・ストーリー、風色通りのまがりかど

初出:雪やこんこん/集英社「りぼん」昭和50年お正月増刊、ハウスキーパー募集中/集英社「りぼん」昭和46年1月号、ただいま契約期間中!/集英社「りぼん」昭和48年8月増刊、夏色の花/集英社「りぼん」昭和49年8月増刊、ライム・ラブ・ストーリー/集英社「りぼん」昭和50年7月号、風色通りのまがりかど/集英社「りぼん」昭和50年10月号

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 ボクが少女漫画を読み始めたのは70年代後半になってから。たまたま読んだ「別冊少女コミック」に萩尾望都の『11人いる!』の前編が掲載されていたことで、単にラブコメとしかイメージのなかった少女漫画の印象が変わったからだった。とはいえ雑誌で読むのではなく単行本中心だったため、特定の作家に偏っていたのは確かだろう。
 田渕由美子は友人に単行本を借りて初めて読んだ。もともとの少女漫画のイメージでもあるラブコメ作品を得意とする作家だったが、そのころにはそういった作品も抵抗なく読むことができた。さらに言えばお気に入りの作家のひとりになってしまった。
 本書は田渕由美子の最初の単行本になるが、手元にあるのは1977年12月10日発行の第11版。初版から2年弱でこれだけ版を重ねているのだから当時の人気がわかるというものだろう。
 収録作品中『ハウスキーパー募集中』はデビュー間もない作品のようで、絵柄もまだ完成していない印象だ。またラブコメ作品ではあるものの、主人公の少女が6歳という設定はずいぶん無茶をしたという気がしないでもない。
 そのほかの収録作品は、『ただいま契約期間中!』『夏色の花』『ライム・ラブ・ストーリー』とほぼ1年ごとの作品を集めた形になっていて、田渕が自分のスタイルを確立していく過程を見ることができる。
 田渕が「りぼん」で活躍していた時期は、陸奥A子らと共に「乙女チック」というジャンルにくくられていた。
 確かに改めて読んでみても「乙女」な感情表現が印象に残る。発表当時は読者に支持され相当な人気だったわけだが、いまの若い読者にはどう受け取られるのだろうかと、ちょっと気になった。
 時代が変わっても田渕が描いたキャラクターたちに自分を重ねる少女はいるだろうが、生活環境の違いの影響は大きいような気はする。とはいえ、70年代の少女漫画を読む機会自体がほとんどないというのが現実だろうが。

 少女漫画の賞味期限(といういい方が適当かどうかは議論の余地もあるだろうが)は短い。多くの作品が初出のまま単行本に収録されることもなく消えてしまっているし、単行本化されたものも、絶版後は再刊行されることは稀といっていい。
 田渕由美子の場合も「りぼんマスコットコミックス」が入手困難な状態になったことで作品を読む機会が失われたと言っていいだろう。ただ90年代に「南風社」というところから「田渕由美子全作品集」というものが刊行されたことがある。刊行予定では4巻までの収録作品が記載されていたが、手元には2巻までしかなく、3巻以降の刊行を確認していない。1巻には原稿が紛失して「りぼんマスコットコミックス」には収録されることのなかったデビュー作も印刷物からの復刻として収録されていた、まさに「全作品集」だっただけに、全巻手に入れたかった。もし、3巻以降の刊行について御存知の方がいればお教え願いたい。

2014年12月 3日 (水)

本棚の旅■ラストシーンはまだはやい/奥友志津子

書 名/ラストシーンはまだはやい
著者名/奥友志津子
出版元/秋田書店
判 型/新書判
定 価/370円
シリーズ名/BONITA COMICS
初版発行日/昭和61年4月10日
収録作品/とてもメタフィジカルな午後、夜の銀子さん、ラストシーンはまだはやい、おおかみたちの定義

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 本書は秋田書店の「ボニータ」に掲載された作品を集めたもので、銀子という女性が主人公のシリーズだ。初出に関しては詳細が調べきれなかったので省略した。
 カバー折り返し部分の作者のコメントには、銀子がどのように変化していくのか、そこまで描いてみたい、とも書かれている。とはいえ、個人的にはこの銀子というキャラクターは、星子の成長した姿のような印象もあって、星子から銀子へとすでに変化していたのではないかという気がする。さらにどう変わっていくのか、というのが作者としての興味だったのだろうか。
 収録されているのは4話のエピソードだが、連続した物語で、一冊の長編と捉えてもいいだろう。最初から連作として描かれたようで、1話目の『とてもメタフィジカルな午後』は銀子というキャラクターの紹介で終わっている印象もある。読み終わってみると、なるほど作者がこのあと銀子がどのように変化していくのかについて言及していることにも納得できる。というより、少し描き足らない気分だったのではないだろうか。
 未読の方に少し説明しておくと、銀子は哲学を専攻する女子大生。大樹という彼氏がいるのだが、付き合ってはいても男女の関係にはない。それでいて住んでいたアパートを追い出されたという理由で、大樹の部屋に居候してしまう。性格がひねくれていて、さほど美人でもない銀子だが、大樹の方は美術を専攻していてそれなりのイケメン。これまでに付き合った女性の数もそうとうのようだ。が、なぜか銀子に本気で惚れてしまって逆らえない。そんなふたりの生活を中心に、銀子の兄や大樹の弟、さらには大樹の元カノ、銀子の婚約者といった人物たちが現れてストーリーは進んでいく。
 星子のシリーズに関して、清原なつのの「花岡ちゃん」シリーズに言及したが、今回の銀子はビジュアル的にも「花岡ちゃん」に近づいた印象もある。おかっぱ頭に眼鏡、さらには哲学専攻と来れば、まさに「花岡ちゃん」だろう。このあたり、奥友がどの程度意識していたのか聞いてみたいところだ。

2014年12月 2日 (火)

本棚の旅■シルバー・ムーン/奥友志津子

書 名/シルバー・ムーン
著者名/奥友志津子
出版元/秋田書店
判 型/新書判
定 価/370円
シリーズ名/HITOMI COMICS
初版発行日/昭和56年11月10日
収録作品/シルバー・ムーン、銀の扉をノックして、グッド・ナイト、ブルー・バイ・ユー、シーズン、アンジー・ガール

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 本書は奥友志津子の3冊目の単行本。このタイトルに惹かれたというのは事実だ。
 初出に関しては、単行本扉ページに「ひとみ掲載」と記載があるだけで詳細は不明。ネット上で確認できるものもあるが確証がえられないため初出リストとして取り上げることはやめた。
『シルバー・ムーン』は、ネット上で見たところ、集英社「りぼん」昭和52年夏の増刊号掲載という情報がある。
 ルナとアンジェラという魔女の姉妹が登場するシリーズ作品の第一作で、本単行本に収録されたほとんどの作品はこの連作シリーズにあたる。
 とある町の古びた館に引っ越してきた美人姉妹。社交的で美しい姉のルナとちょっと性格はキツイが頭脳明晰な妹のアンジェラだ。遅れて母と祖母も引っ越してくる予定だという。隣家に住むロジャーはとりまきのひとりに加えようとアプローチを始めるのだが…。
 タイトルは作者が中学時代に聞いていたというポップスの題名からつけられたという。
 最初からシリーズ化を意図していたかどうかはわからないが、魅力的なキャラクターを創出したからには、そのキャラクターをもっと動かしたいと思うのは当然だろう。実際、一作のみで終わっていたらもったいなかったと思う。
『銀の扉をノックして』は、秋田書店「ひとみ」昭和53年7月号に掲載されたようだ。
 ルナのシリーズではないが、ファンタジー作品で奥友カラー全開という印象が強い。
『グッド・ナイト』は、秋田書店「ひとみ」昭和53年10月号掲載。ルナのシリーズの一作。
 今回もふらりと引っ越してきたルナ姉妹と隣家の男子大学生シドが中心になっているラブコメディ。
 魔女や魔法を超心理学やESPに関連づけようとするところはSF作品の多い奥友らしいところだと思うし、70年代末のSFコミックにはよく見られた傾向だと思う(作中では魔法をESPだと断じているわけではない)。
『ブルー・バイ・ユー』は、秋田書店「ひとみ」昭和53年12月号掲載。
 今回はアンジェラ単独のエピソードになるが、『砂糖ぬきのコーヒー一杯』収録の『九月終章』を下敷きにした作品という印象がある。もちろん続編とかいうことではなく、設定や登場人物は全く別のものになっているのだが『九月終章』を違う視点で捉えたストーリーといえるのではないだろうか。
『シーズン』は、秋田書店「ひとみ」昭和54年6月号掲載。『アンジー・ガール』は初出不明。共にアンジェラを主役としたエピソードとなっているが、『シーズン』はコメディタッチ『アンジー・ガール』はシリアスと趣はずいぶんと違う。
 個人的にはルナの方が好きなのでもっと活躍させてほしかったのだが、作家としてはアンジェラを動かす方が面白いものが描けたのだろう(結果的にルナは綺麗なだけで中身のないキャラクターになってしまった印象もある)。便宜上表題作『シルバームーン』にちなんで「ルナシリーズ」としているが、実質上は「アンジェラシリーズ」と言えるだろう。

 こうしてみてくると、等身大の女性を主人公にした「星子シリーズ」、魔女の「ルナシリーズ」そしてSF連作の『ドリーマー』が奥友志津子の代表作と言っていいのかもしれない。ぜひ、再刊行、再評価の機会があることを願う。

2014年12月 1日 (月)

本棚の旅■砂糖ぬきのコーヒー一杯/奥友志津子

書 名/砂糖ぬきのコーヒー一杯
著者名/奥友志津子
出版元/秋田書店
判 型/新書判
定 価/370円
シリーズ名/HITOMI COMICS
初版発行日/昭和56年7月15日
収録作品/きみらよ反旗をひるがえせ、砂糖ぬきのコーヒー一杯、九月終章、幻想庭園

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 本書は奥友志津子の2冊目の単行本。初出に関しては本書の扉ページに「ひとみ・ひとみデラックス掲載」との記載があるだけで、各作品に関してのデータはない(ネット上で確認できるものもあったが、信用に足らないため割愛した)。
 表題作である『砂糖ぬきのコーヒー一杯』および『きみらよ反旗をひるがえせ』の2作は、最初の単行本『遠い雷鳴の中』に収録された『3月はブルースにかこまれて』の続編。主人公の星子は作者も予想外の人気があったらしい。このあたりも清原なつのの「花岡ちゃん」に共通しているように感じたりもする。
『きみらよ反旗をひるがえせ』は秋田書店「ひとみ」昭和54年12月号に掲載されたようだ。大学受験を目前にした星子と腐れ縁の京介を中心に描かれる日常だが、星子のいとことして登場する女子大生、久美子の存在が、また清原なつのの「花岡ちゃん」に登場する笹川華子女史に似ていたりする。さらに言えば星子が思うところの人生や生きる意味ということ自体が「花岡ちゃん」でも語られているようなことだったりするのではあるが…。もっとも思春期にはありがちな思考であって、共感する読者が多かったからこその人気だったのだと思う。
 タイトルのイメージだとクラスや校内で教師や学校に対して反対運動でも始めるのかと思ってしまうが、凡庸として生きているように見える人々の心の中にも、何かしら生きる目的なり「反旗」があるのだという内面を意味したものだった。
『砂糖ぬきのコーヒー一杯』は大学生になった星子のエピソード。ネット上では秋田書店「ひとみ」昭和54年9月号との記載が確認できるが、55年の間違いであろう。
 大学に入ってみると、期待していた生活とは違っていて目標や目的を見失いつつある星子。その彼女の前に内藤 笙という学内でも有名な才女が現れる。迷っていた星子に答えのヒントを与えるような存在で、彼女のいる演劇部に関わることになっていくのだが…。今回のエピソードではいままで恋愛経験のなかった星子が恋をするというのが一番のテーマ。そのため連作の中ではもっとも少女漫画的な内容になっているといっても言い。
 読んでいて思ったのは、「花岡ちゃん」もそうなのだが、内田善美の『空の色に似ている』にも印象が近いシリーズだったということ。この星子のシリーズが「花岡ちゃん」シリーズや『空の色に似ている』ほど話題にならないのはずいぶんと残念なことだと思う。やはり発表媒体の問題だったのだろうか。
 これは余談のようなものなのだが『砂糖ぬきのコーヒー一杯』には星子の飼い猫が登場する。最初のシーンでは「ロン」と呼ばれ、2回目に登場したときには「ポン」と呼ばれていて、おかしいなと思ったら「ロン」は三毛猫で「ポン」はトラ猫。どうやら2匹の猫がいたらしい。また浪人せずに大学に入っているので、まだ未成年のはずの星子と京介が平気で酒タバコっていうのはまずかったんじゃないの? と(笑)。
『九月終章』は、両親を亡くし、育てられていた祖母にも死なれた遠い親戚の少女を引き取り、姉弟として暮らすようになった主人公によって語られる、美しすぎる姉の物語。
『幻想庭園』はファンタジーホラーという印象の作品。こういうミステリアスな作品に奥友らしさを感じてしまうのは、SF作品の印象が強いからかもしれない。

 今回、本書を改めて読んでみて思ったのは、星子のシリーズを中心にした作品集などが再刊行されてもいいのではないかということ。そろそろ奥友志津子の再評価を始める時期に来ているのではないだろうか。

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