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2012年6月30日 (土)

本棚の旅■大和小伝/さいとう・たかを

書 名/大和小伝
著者名/さいとう・たかを
出版元/小学館クリエイティブ
判 型/B6判
定 価/1500円+税
シリーズ名/復刻名作漫画シリーズ(ただし本書にはこの表記はない)
初版発行日/2009年8月8日
収録作品/剣法無双、蒼雪、右うでを切る、修羅外道、助勢

 さいとうプロで制作・出版された貸本シリーズから5編を収録した一冊。ストーリー上のつながりはなく、時代劇の読み切り短編シリーズというものである。
 これらの作品は『無用ノ介』『影狩り』といったさいとう・たかをの代表的な時代劇画が描かれる以前のものであり、また初出が貸本ということもあってか多少描きとばしている印象がないわけではない(背景や効果線などの描き込みが少なく全体的に画面が白い印象がある)。
 とはいえこの当時からさいとう作品は読みやすく、ストーリーや構成もしっかりしているのがわかる。
 すでにプロダクション制になっていて、各作品のタイトルページには「作・構成/さいとう・たかを」という表記も見られる。
 現在もリイド社を中心にして自作品は自分の目の届く範囲で出版しているという感じのするさいとう・たかをなので、特定の作品は装丁を変え形を変えて出版が繰り返されているが、貸本時代の作品になると日の目を見ないものが多いのが残念だ。

 さて本書収録の各作品だが、剣に生き剣に死ぬ武士たちが描かれている。特には藩の陰謀あり、剣の腕に溺れる武芸者ありと、時代劇の醍醐味が味わえる。雑誌に活動の舞台を映してからの作品に比べ、ひとつの作品に詰め込まれた内容は少々薄い印象もあるが、その分テーマはダイレクトに伝わってくる。
 貸本劇画に興味のある方、さいとう・たかを作品がお好きな方はぜひ読んでいただきたい。

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2012年6月29日 (金)

■バロム・1/さいとう・たかを

初出/講談社・ぼくらマガジン(昭和45年1号~昭和45年52号)
書誌/さいとうプロ(B6版全5巻)
   リイド社(A5版全2巻)
   リイド社(文庫版全3巻)
   リイド社・バロム・1/クロスファイル(原作コミック、特撮ドラマ、アニメの3メディアを「クロス」した研究本)

 この作品は、特撮ドラマ『超人バロム・1』としてテレビ放送されたので、そちらの方で知っているという人が多いだろう。もちろんさいとう・たかをによる本作が原作ではあるのだが、掲載誌の休刊に伴う連載終了から1年以上が経ってのテレビドラマ化ということもあり、リアルタイムでのコミカライズ作品(たとえば秋田書店「冒険王」の古城武司版)の方が、漫画版としては知名度が高いかもしれない。
 原作者が劇画の大御所さいとう・たかをである事を考えれば、なぜこの原作コミックが長い間気軽に読むことができなかったのか不思議ではある。
 連載は講談社の「ぼくらマガジン」であり、同誌には『タイガーマスク』や『仮面ライダー』といったテレビ化作品も連載されていて、小学生を中心に注目されていた雑誌であったと思う。しかしながら、雑誌の購買層としては低年齢に絞りすぎたのか、週刊マンガ誌としては失敗に終わり、休刊した。
 単行本は講談社から刊行されることはなく、さいとうプロからの刊行となった(ちなみに「ぼくらマガジン」連載作品で講談社から単行本が刊行されたのは『タイガーマスク』くらいであり、『仮面ライダー』や永井 豪の『ガクエン退屈男』『魔王ダンテ』などは朝日ソノラマの「サンコミックス」から刊行され、そのほか若木書房の「コミックメイト」から刊行された作品もある)。
 このさいとうプロ版が流通面で弱かったのか、結果として本作の単行本としてあまり知られることがなかったのは事実だと思う。またその後青年マンガ誌に発表した作品は繰り返し再刊行していたさいとうも、本作を含めた少年誌連載作品はあまり再刊行すること(あるいはされること)がなく、リイド社によるA5版ハードカバーでの全2巻刊行まで幻の作品となってしまったのである(同様な例では『デビルキング』がある)。
 とはいえ、このA5版も初出誌の誌面を原稿にしていて、実は原稿自体が現存していない可能性を感じさせる(初出時の広告や柱コピーなどもそのままの状態で収録しているので、当時の雑誌の雰囲気のまま読めるという点ではここまで忠実な復刻はないともいえる)。とすれば、長い間再刊行されなかったのも頷けるところだが、単行本に収録された著者へのインタビューでもそれには触れておらず、疑問の残るところではある。

 さいとうはインタビューで、本作を「自作唯一の少年漫画」だと言っている。発表媒体が少年マンガ誌であっても、その内容や意図するものは、少年漫画を卒業していく世代をつなぎ止める「ちょっと大人の」作品を心がけていたといい、本作はそのような制限なしに、少年向けに少年漫画を描いた作品ということだ。
 健太郎と猛の、ふたりの少年が宇宙の善の意志「コプー」によって代理人(エージェント)として選ばれ、ふたりの心を合わせることで「バロム・1」に変身する。そして地球を狙う悪の「ドルゲ」から地球を守る、というのが基本的な設定だ。これはテレビドラマとも共通するところだが、「バロム・1」の容姿そのものはテレビドラマとは全く違っている。というのは、さいとうは当初西洋の甲冑的なものも考えたというが、やはり表情をだせないと、少年ふたりの友情によるパワーというテーマを描きづらいと判断し、人間的なスタイルになったという。テレビドラマ版の造型の方が元々のアイデアに近いかもしれないとも言っている。この主人公であるヒーローの見た目の違いも、本作がテレビドラマの原作コミックであるという印象を薄めていた原因のひとつであったのは確かだろう。
 宇宙に於ける善と悪の対立、その代理人が地球を守るために闘うというのは、石森章太郎・平井和正の『幻魔大戦』を思い浮かべてしまうが、そこは劇画のさいとう・たかを。少年漫画ではあってもリアルな状況は常に忘れていない。たしかに「バロム・1」という存在自体が少年漫画的なものではあるし、ドルゲによって起こされる事件も常識を逸脱しているのだが、巻き込まれる人々のリアクションがリアルな雰囲気を持って描かれているのだ。このあたり、現実にそのような超人が現れたら、常識を超えた事件が起こったら、というシュミレーション的な感覚なのかもしれない。
 テレビドラマを見ていたというファン、またさいとう・たかを作品のファン、特にこの原作コミック版をまだ読んだことがないという方に読んでいただきたい作品である。

※テレビドラマ版の主題歌には多くの擬音が歌詞に含まれているが、これは作詞家が原作コミックの擬音から採ったという。たしかに本作を読んでいると、主題歌に歌い込まれている擬音がたびたび出てきて、頭の中でメロディーが流れてきてしまう。

・リイド社A5版刊行データ
第1巻、第2巻ともに平成10年5月28日初版発行。

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2012年6月25日 (月)

■男どアホウ甲子園/水島新司(原作・佐々木 守)

初出/小学館・週刊少年サンデー(1970年8号~1975年9号、1999年36・37合併号)
書誌/秋田書店・秋田サンデーコミックス(全28巻)
       〃  ・秋田漫画文庫(全18巻)

「野球漫画の水島新司」最初のヒット作と言っていい作品であり、5年におよぶ連載期間、新書判単行本にして28巻という分量も、その後の水島新司作品の長期連載、大長編作品の最初のものとなっている。またアニメ化された水島新司作品としても最初のものである。また、原作者である脚本家の佐々木 守にとっても、漫画原作の代表作である。
 野球狂の祖父によって「甲子園」と名付けられ、幼いころから野球好きとして育てられた主人公、藤村甲子園が、剛球投手として高校野球、大学野球そしてプロ野球でさまざまなライバルたちを相手に活躍していくのがストーリーの基本。このあたりは他のスポコン漫画とも共通するところと言っていいが、なんといっても主人公の突き抜けた性格が本作の一番の特徴となっているのは事実だろう。自ら「野球どアホウ」と言い、「野球以外に能がない」という、そして投げる球は直球のみというばか正直で一本気、そこ抜けに明るく邪心のないところは作品の爽快感にもつながっている。
 とはいえ、その主人公の生きざまを貫き通す影には、実のところ周囲の人々にかなりの犠牲が伴っていたりして、その責任をどうとるんですかと、真面目に突っ込んでみたくなったりもする。
 主人公が投手であるため、ライバルはバッターだろうと単純に考えてしまうところだが、意外にもその多くは同じピッチャーだったりする。最初に登場するのが池畑という中学から高校にかけてのライバルで、高校野球・甲子園大会では投手戦を展開する。
 直球、剛球が武器の甲子園は、とにかく相手に打たせないことが自慢であり、バッターとは力と力の勝負という図式になり、特別な打法や攻略法がなかなか出にくいということも投手同士の投げ合いという展開になったのかもしれない。また、高校野球がそうであるように、投手であっても打撃力も要求されるので、甲子園自身打撃もチームの中では優れていたりする。そこでライバルともお互いに投げ、打つ勝負が展開されている。
 作画面でも水島新司の力の入れ要は画面から充分伝わってくるもので、特に試合中の球場の臨場感は流石と言っていい。もっとも投球フォームなどは川崎のぼるの『巨人の星』の方が印象的だったかもしれないが(『巨人の星』は投球フォーム自体に特徴を持たせていたせいもあるだろう)。
 
 本作の続編として、水島新司のオリジナルで『一球さん』が描かれ、また『大甲子園』にも藤村甲子園が登場している。
 同じ水島作品の『野球大将ゲンちゃん』でも、本作同様、野球狂によって物心がつく以前から野球に接し、少年野球で活躍するのだが、これは本作において主人公の誕生から高校入学までの成長過程がある意味とばされていたことで、少年時代、リトルリーグなどを改めて描こうとしたのではないかと思われる。その意味で『~ゲンちゃん』はもうひとつの『男どアホウ甲子園』と言ってもいいのかもしれない。

・秋田サンデーコミックス刊行データ
1・昭和45年7月5日、2・昭和46年4月5日、3・昭和47年2月5日、4・昭和47年8月10日、5・昭和48年5月30日、6・昭和48年8月20日、7・昭和48年12月10日、8・昭和49年5月10日、9・昭和49年7月30日、10・昭和49年9月10日、11・昭和49年10月10日、12・昭和49年11月10日、13・昭和49年12月10日、14・昭和49年12月25日、15・昭和50年2月10日、16・昭和50年3月20日17・昭和50年4月10日、18・昭和50年5月10日、19・昭和50年6月30日、20・昭和50年7月31日、21・昭和50年8月10日、22・昭和50年9月20日、23・昭和50年10月15日、24・昭和50年11月15日、25・昭和50年12月20日、26・昭和51年1月20日、27・昭和51年2月15日、28・昭和51年3月10日

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2012年6月17日 (日)

■銭っ子/水島新司(原作/花登 筺)

初出/秋田書店・週刊少年チャンピオン(1970年14号~1971年32号)
書誌/秋田書店・少年チャンピオンコミックス(全5巻)
    〃  ・秋田コミックセレクト(全3巻)

 本作は水島新司の「少年チャンピオン」に於ける最初の連載作品で、本作の後『いただきヤスベエ』、そして『ドカベン』が連載されている。
 原作の花登 筺は『細うで繁盛記』などのドラマの作者として知られ、商人もの、根性ものを得意とする作家として知られているわけだが、本作もタイトルで感じられる通り、銭、お金にまつわるストーリーとなっている。
 東京杉並の高級住宅地の中でも豪華な家に住む会社社長の子供として生まれ、なに不自由なく育っていた気弱な主人公は、突然の交通事故により両親を亡くし、妹とふたり残されることになる。そして父の兄弟である親類の家に引き取られることになるのだが、まだ中学生だというのに学校にも行かせてもらえず働かされ、奴隷のような扱いを受け、一端は妹と海に飛び込み死のうとさえするのだが、ガタロ船の船長に助けられ、地道にでも働いて生きてゆこうとする。しかし船長が怪我をしたときに、お金がないということだけで街の医者たちが診察してくれなかったことを目の当たりにして、金を稼ごうと、妹を残してひとり旅立っていく。物語はここから始まるといってもいい。
 しかしどうすればお金を稼ぐことができるのか、商売を始めるにしても元手がなければできないと知り途方に暮れる主人公の目に、ひとりのこじきが映った。
「こじきなら元手がなくてもできる」と真似をしてみるのだが、うまくいかない。そしてそのこじきが声をかけてきた。
 こじきとはいえ豪華な家に住み、高級レストランにも出入りする(もちろんスーツに着替えて)その男。主人公によって銭神と呼ばれることになるその男によって、主人公は金儲けのノウハウを学んでいくことになる。
 当初本作の単行本は2巻までしか刊行されず、そのまま途絶するかと思われたのだが、5年ほどの間隔をあけて3巻以降が刊行され、無事ラストまで収録されることになった。秋田書店はその時期同じように途絶していた単行本の続巻をまとめて刊行していたと記憶する(つのだじろうの『虹をよぶ拳』や藤子不二雄の『わかとの』など)。
 個人的にあまり野球漫画を読まないため、水島作品に触れる機会は少なかったのだが、本作を始めとした野球もの以外の作品を読んでみると、そのエンタテインメント性がよく分かり、水島作品をもっと読んでみたくなった。野球作品から水島新司ファンになった方にもぜひ読んでいただきたい作品である。

※手持ちの単行本では1、2巻のカバーが欠如しているため、3~5巻の画像しか用意できませんでした(2巻の画像は秋田書店のコミックスに挟み込まれていたカタログから)。

・少年チャンピオンコミックス刊行データ
第1巻:昭和47年3月10日、第2巻:昭和47年9月10日、第3巻:昭和52年7月10日、第4巻:昭和52年7月10日、第5巻:昭和52年8月10日

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2012年6月 9日 (土)

本棚の旅■いただきヤスベエ/水島新司(原作・牛 次郎)

書 名/いただきヤスベエ(全3巻)
著者名/水島新司(原作・牛 次郎)
出版元/朝日ソノラマ
判 型/新書判
定 価/各350円
シリーズ名/サンコミックス
初版発行日/第一巻・昭和49年10月7日、第二巻・昭和49年10月7日、第三巻・昭和49年10月7日
収録作品/いただきヤスベエ

 本作は、秋田書店の「少年チャンピオン」に1971年36号~1972年11号にかけて連載されたもので、単行本は朝日ソノラマの「サンコミックス」で刊行されたあと、講談社の「KCスペシャル」でも刊行されたようだ。
 初出の「少年チャンピオン」では、その後『ドカベン』が連載され水島の代表作となるわけで、野球漫画家というイメージとなる以前の作品といってもいいだろう。
 タイトルにもついてる「いただき」という言葉は、主人公とその周辺の登場人物たちがスリであるからだろう(本編ではただのスリではなく「かすみ者」という忍者のような流れを持つ一族という設定である)。とはいえ単にスリを主人公にした作品ということではなく、スリグループ同士の闘争がメインとなっている。主人公が属する白銀(しろがね)一族とかつては同じ一族だったが分派した黒十字組である。後半になるとさらに鬼政一家が加わり、3つのグループで東京・山手線のシマを奪い合うことになる。また3つのスリグループの中心人物、白銀一族のヤスベエに黒十字組の若、鬼政一家の鬼政に鬼刑事の異名を持つ立脇が登場し、スリの3人が立脇の警察手帳をスリ取るという勝負に挑む。
 原作の牛 次郎はビッグ錠とのコンビで『包丁人味平』や『釘師サブやん』などのヒット作があるが、突飛な設定や展開で楽しませてくれる原作者だ。本作でも影イタチという黒十字組のスリの武器が屁であったり、取り調べ中に容疑者を平気で殴り倒す鬼刑事だったりと、むちゃな展開でストーリーを盛り上げている。
 構成的には前半と後半の2部構成になっていて、前半はふたつのスリグループの埋蔵金をめぐる地図の奪い合いであり、後半は前述した通り縄張り争いである。ページ数的にも半々という分量になっていて、2巻の中程で後半となる。前半と後半のあいだでは数カ月の時間の経過があるのだが、その間にヤスベエは急激に成長していて、前半では子供っぽかった雰囲気が後半では青年のように描かれている。
 野球物以外の水島作品ということであまり話題になることは少ないが、エンタテインメントとしてよくできた作品でもあるので、読む機会があればぜひ手に取ってほしい。

※ヤスベエを逮捕しようと顔を会わせればヤスベエを追いかける定年間近の老刑事が登場するが、その名前は銭形。もちろん銭形平次の子孫という設定である。

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2012年6月 8日 (金)

本棚の旅■ゴキブリ旋風/水島新司

書 名/ゴキブリ旋風(全2巻)
著者名/水島新司
出版元/ひばり書房
判 型/新書判
定 価/各340円
シリーズ名/ひばりコミックス
初版発行日/第一巻・1975年6月25日、第二巻・1975年6月25日
収録作品/ゴキブリ旋風(全3話)、闘魂

 本作は1970年に秋田書店の『冒険王』に連載されたもの。単行本はひばり書房の「ひばりコミックス」から全2巻で刊行されている(水島作品を紹介したサイトには単行本の発行を78年としているところもあるが、例によってひばりコミックスの奥付表記の問題であり、初版がいつかハッキリしない)。
 主人公は貧しい家の中学生男子で、その強靱な生命力からゴキブリとあだ名されている。そのゴキブリを目の敵にしているのが、PTA副会長の息子で風紀委員の座間。彼はカマキリと呼ばれている。1話はそんなゴキブリとカマキリの争いの中で、ゴキブリの生活する周辺の人間模様や、クラスメイトたちとの交流が描かれる。2話では怪我をし、瀕死の父親をゴキブリが子供の頃助けられた医院に担ぎ込み、いまは酒びたりとなっている院長の手術によって一命を取り留めるのだが、院長がのめり込んでいるボクシングの世界にゴキブリも飛び込むというもの(実は1話でもゴキブリの父は怪我をするのだが、2話ではその怪我の原因が違っているフシがある)。3話はゴキブリが同じ中学の女子バレーボールチームのコーチになって、一度も試合に勝ったことのないチームを大会で優勝させるというもの。ゴキブリのキャラクター自体は変わっていないと思うのだが、1話と比べるとまったく世界観の違う展開となっている。全3話ではあるが、同じゴキブリという少年を主人公にした独立したオムニバス作品という形で読むこともできる印象だ。
 2巻の巻末には『闘魂』というボクシング漫画が収録されているが、こちらの初出はわからなかった。

 水島新司といえば『ドカベン』や『野球狂の詩』といった野球漫画の印象が強いが、それらの作品を手がける前には本作のような青春ものや、スリを描いた『いただきヤスベエ(原作・牛 次郎)』そして『銭っ子(原作・花登 筐)』などの野球以外の作品がある。

※第1話にはバナナの叩き売り、見世物小屋や「へび女」などが登場し、風俗文化を知る一面もある。

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2012年6月 7日 (木)

■挑戦資格/園田光慶(ありかわ・栄一)

初出/東京トップ社(1962~1963年描き下ろし)
書誌/東京トップ社・ハードボイルド傑作集(全9巻)
   パンローリング・マンガショップシリーズ(全3巻)

 本作は、園田光慶が貸本作品を手がけていた時代に、ありかわ・栄一名義で発表したもの。本作を制作中に「少年キング」で『車大作』を連載し、雑誌にも進出することになり、結果的に1960年後半から描き下ろしを続けてきた貸本劇画の「ハードボイルド傑作集」シリーズを本作で終了することになったようだ。ちなみにこのシリーズは全26巻におよぶ。

 本作の冒頭で、主人公は記憶をなくしており、バーで知り合った猪又という老人の紹介でやくざが経営するクラブの用心棒となり、マシンガンの名手アゴの銀次と出会う。少しずつ記憶を取り戻していく主人公は、自分が早乙女 豪という名であったこと、アフリカから、現地で捕らわれている父を助けるため、人を集めるため日本に戻ってきたことなどを思い出していくが、やくざ同士の抗争のため、雇い主であった佐伯が殺され、アフリカへ戻る前に佐伯の仇を討つことになる。その間、怪力とブーメランのむっつりの牛や身軽さと爆発物を得意とする手品師の狂といったメンバーたちとも知り合い、ともにアフリカを目指すことになる。
 そう、のちに描かれる『ターゲット』が、まずアフリカを舞台にしていた下地がここにあったのだ。
 当初は反白人グループと考えられていたルムンバ団だったが(父も彼らに捕らわれている、と豪も信じている)、実は彼らは白人のグループであり、世界征服を企む集団だった。
豪の父などがアフリカで掘りあてようとしていた金を資金に、細菌爆弾などを製造し、世界征服に向けた計画を進めていたのだ。このあたりの設定も『ターゲット』に通じるところだろう。実際『ターゲット』はこの『挑戦資格』を別の形で描いたものだったのかもしれない。

 タイトルの印象だと、主人公が何かに挑戦するために次々にハードルを超えていくようなストーリーを想像するが、実際のところあまり的確なタイトルではなかったようにも思える。ストーリーの基本は主人公の、父の奪還(途中で死んだという噂を聞き復讐へと目的は変わるが)であり、ルムンバ団の正体が明かされるのも、主人公が仲間と離れているときに、仲間たちが知るという設定で、ルムンバ団に対する挑戦という形もあまり的確ではない。そしてそこに「資格」が必要になるわけでもない。
 また作画面では、中盤以降は気合も感じるが第一部あたりは貸本劇画らしいといってしまうと語弊があるかもしれないが、流して描いているような印象も否めない。描き込みも『アイアン・マッスル』ほど描き込まれていない印象であった。
 ただ、ストーリー展開は先を予想できないもので、どんどん読みたくなる勢いのあるものだ。
 貸本劇画として刊行され、その後は再刊行の機会もなく埋もれていたが、パンローリングのマンガショップシリーズで再刊行され、再び読むことができるようになった。貸本で読んだことのある読者だけではなく、貸本を知らない世代の読者にも一読を薦めたい。

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2012年6月 6日 (水)

■性病部隊/園田光慶(原作・小池一雄)

初出/プレイボーイ(1971年3号~7号/※園田光慶作品のリストを作成しているサイトでは10号~さらに連載されている記述があるが、小池一雄作品のリストではそれはない))
書誌/大都社・ハードコミックス(昭和49年10月30日/初版には帯あり)

 なかなかセンセーショナルなタイトルで、自分も大都社のコミックスの巻末広告で本書のタイトルを知ったとき、どんな作品なのか好奇心が治まらなかった。が、すでにその当時入手困難で古書店でも見かけることがなく、半ばあきらめていたときに手に入れたものだ。
「THE ENDからの逃亡」というシリーズのもと『性病部隊』と『夕日の罠』という2話から構成されるもので、表題となった『性病部隊』は、CIAが培養した新種の性病に感染した男女ふたりのエージェントが、相手国に入り込み蔓延させるというもので、セックスシーンもふんだん。とはいえ71年当時の、青年劇画の枠の中でのことである。もちろんストリー自体はエージェントふたりの葛藤などシリアスなもので、シリーズタイトルにもあるように、「このままでは世界がTHE ENDとなってしまう」という危機感をあおっている。
 第2話である『夕日の罠』は「THE ENDからの逃亡」など、反戦歌で若者の人気を集めるシンガーを主人公に、その影響力を畏れた国防総省のエージェントが彼を陥れようと画策するというもの。
 どちらの話も小池一雄らしいといえばらしいもので、なかなか読みごたえのある作品だ。また園田もそれまでのダイナミックな作風にしっとりとした色気をプラスしたものになっているように思われる。
 タイトルがタイトルだけに復刻の機会がないのかもしれないが、作品としては多くの人に読んでもらいたい内容であり、手にする機会があったらじっくりと味わっていただきたい。

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