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2005年6月 8日 (水)

椋 陽児と緊縛アートの魅力

 官能劇画やSM雑誌といったものは、主にその場限りのもので、いわゆる読み捨てられる媒体である。

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椋 陽児と緊縛アートの魅力
 官能劇画やSM雑誌といったものは、主にその場限りのもので、いわゆる読み捨てられる媒体である。一般の漫画誌であれば作品が単行本になったり、雑誌そのものが後年まで保存されることは多いが、性に関する媒体ではそれすらも稀なことになりやすい。古本として流通することすら少ないのだからこの分野の作品を保存したり研究したりしようとするならば、そうとうの労力を必要とすることだろう。そんな中でも官能劇画の分野では70年代末から80年代の初めにかけて小さなブームがあったおかげで主要な作家、作品は単行本として残り、いままた再評価、再ブームが起こりつつあるのは救いである。その反面、SM雑誌の分野では、一部のマニアは自己のコレクションとして保存はしているが、大多数の興味を持っている人々には、それらを目にする機会は訪れない。ことに挿絵、イラストの分野になるとこれは顕著で、イラスト集や作品集を出したことのある作家は数える程といっていい。最近になってようやく劇画の作品集が初刊行された前田寿按にしても、雑誌上で発表されてきた膨大な枚数の緊縛イラストの大部分は埋もれたままになっているのだから、その他の緊縛イラスト、SMアートの置かれた現状は察するに余りあるだろう。 椋 陽児はこのような緊縛・SMアートの世界でも比較的恵まれた環境にいた、ということができるだろう。劇画の作品集は確認している範囲でも18冊が刊行されていて、イラスト集も2冊出ている。特に劇画作品ではサン出版の「サタンコミック」シリーズ全7冊は椋の個人レーベルだったのだから、その扱いは破格とも言える。

 椋 陽児が活躍するジャンルは1部の官能劇画誌を除けばSM雑誌に限定されていたと言い切ってもいいくらいに集中していた。椋が編集者としても参加していた「裏窓」では別名義で小説も発表していたが、「SMクラブ」「SM綺譚」「SMコレクター」などに活躍の場所を移してゆくと同時に、劇画・イラストが中心になってゆく。「綺譚」「コレクター」では連作イラストや扉イラストも手掛け、椋の日本的な雰囲気を醸しだす緊縛イラストは確実に一時期の日本のSM雑誌のイメージとして当時の読者の胸のなかに焼きついているはずである。
 劇画における椋のタッチは、やはりSM・緊縛ものの官能劇画で人気のある笠間しろうに良く似ているのは有名だが、笠間が人妻・熟女ばかりを描いていたのに対し、椋は制服少女を描くことが多かった。タッチが似ていることによる差別化としての一策とも思うのだが、緊縛イラストでも椋が描くのは制服の少女を中心に、見るからに汚れのない処女といった風情であることが多い。それだからだろうか、椋の緊縛画に登場する少女、女たちの胸は、はけっして小さいわけではないが、取り立てて大きいことがない。数は少ないが金髪の外人女性を描いたものでも、巨乳や爆乳といった類ではない。それでいて柔肌に食い込む麻縄の感触が実にリアルに伝わってくるのは、椋のデッサン力と表現力が優れていることの証明でもあるだろう。ことにデッサン力という点では、緊縛のような通常しないポーズを強いられた人物をあっさりと描いてみせるあたり、それだけで惚れ惚れとしてしまう。加えて縛られている少女たちの魅力である。椋の描くのは日本人以外のどこの少女でもないというくらい日本人的な、ベッドよりも布団が似合い、カーペットよりも畳が似合う少女たちである。いまの目から見れば少々野暮ったい印象を受けるセーラー服も、椋の描く少女には似合いすぎているのである。またこれは古臭いイメージではなく、郷愁のような、ある年齢以上の者に共通した少女のイメージを画面に定着させていると言っていいだろう。
 路地裏の怪しい一軒家、または町外れの使われなくなった倉庫といった雰囲気が濃厚な椋の緊縛イラストは、同時に70年代末までのSM雑誌そのもののイメージだったのかも知れない。人に言えない趣味、秘密クラブでこっそりと行われる同好の志だけで楽しむものといった印象だったSMも80年代に入るとファッショナブルでオシャレなものとして認知されはじめ、90年代ではセックスにおけるゲームのひとつになってしまうのである。こういった風俗を取り巻く状況からも、当時の椋のイラストは郷愁を呼び起こさずにはおかないだろう。

 すっかり忘れ去られてしまった感のあった椋 陽児だったが、このところの官能劇画再ブームに乗って劇画作品集『きつねの花嫁』が刊行され、また画集も刊行が決まったという。椋の再評価がSM・緊縛イラスト全体への再評価につながれば、これほど嬉しいことはない。まずは椋の復活を祝して、乾杯!

椋 陽児・著作リスト

劇画単行本
・サタンコミックス1/牝縛り S54.8.5
・        2/未確認
・        3/好色縄   10.2
・        4/縄好き   11.1
・        5/未確認
・        6/縄痴態 S55.1.3
・        7/縄遊戯    2.2
・縄処女(サン出版)     S51.12.1
・縄化粧(サン出版)     S53.1.1
・縄初夜(サン出版)     S53.9.5
・縄美少女(サン出版)    S57.4.1
・淫獣の館(淡路書房)    S50.3.20
・美少女くずし(松文館)   不明
・処女人形(松文館)     不明
・美少女狩り(松文館)    不明
・しごき初夜(松文館)    不明
・哀縄讃歌(合本/松文館)  不明
※他に、サン出版から別の作家1名との合本など数冊未確認の単行本が出ている。   
画集
・処女狩り(サン出版)    S56.4.5
※「SMコレクター」の増刊として刊行されたイラスト集。これ以前にも同様のスタイルでイラスト集が出ているらしい。

挿絵
・薔薇と蛇/荘 徹也(譚奇舎/三崎書房)S45.5.20

その他、椋作品が掲載されていた主な雑誌
・「裏窓」(あまとりあ社)/小説の挿絵などの他、落合竜二他の名義で小説やエッセイも掲載されていた。
・「SMコレクター」(サン出版)/小説の挿絵の他、劇画、連作緊縛イラスト。
・「SM綺譚」(サン出版)/小説の挿絵、連作緊縛イラスト、扉イラスト。
・「SMフロンティア」(三和出版)/小説の挿絵、連作緊縛イラストなど。
・「SMクラブ」(日本出版社)/小説の挿絵の他、絵物語、緊縛イラストなど。

猫目ユウ/初出・「まんだらけZENBU6」

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