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2005年5月18日 (水)

猫目ユウの、本大好き!

第五回〔秋吉 巒を求めて〕

 SM雑誌の存在を知ったのは中学のころだったろうか。始めからボクの場合、変態的なイメージは無く、ただポルノの一ジャンルとして受け止めていたような気がするし、周りの友人たちも同様だったと思う。で、そのSM雑誌の代表的な「顔」のひとつに秋吉 巒のイラストがある。
 秋吉 巒は一言でいって不出世の天才であった。また、生前は自作をすべて手放さなかったという伝説もある。普通、画家は描いた絵を売って生計をたてるわけだが、秋吉はそれをしなかった。自然生活は圧迫されるので、作品を手放さずに済む雑誌のイラストなどを主に手掛けることになったのだろう。
 どういういきさつでそうなったのか、やはり生活のためだったのか、秋吉はまず、カストリ雑誌の表紙でその技を公にする。後にこの頃の作品を偶然目にした外国人が、秋吉家を訪れ作品を譲ってほしいと迫ったときにも秋吉はかたくなに拒んだという。日本のコレクターでも銀座で画廊を開いている林氏なども秋吉家を訪れ作品を譲ってもらいたいという交渉をしたらしいが、やはり拒まれたということである。
 また、旧「宝石」誌上では香山 滋の作品にイラストを付けたりもしていたが、後はもっぱらSM誌上での活躍となる。
 秋吉の絵の魅力とは何なのだろうか。ひとつには雑誌作品、いや秋吉の全作品に通じて言える事であるが、エキゾチックな女性が常に描かれているということだろう。そして彼女たちの多くはその肌を惜しげもなく晒しているが、そこには卑猥な空気はなく、美しく幻想的な世界が展開している。北原童夢が「フェティシズムの修辞学」でSM画家を取り上げたとき秋吉 巒は入っていなかったが、まさにこの点において、秋吉の作品がSMを越えた芸術作品であることを示している。
 秋吉がもっとも活躍したのはSM雑誌がポルノの一ジャンルとして定着して行ったのと同じ七〇年代であるが、彼の作品の持つ幻想性とSMイラストにおける神秘性と言ったものは、むしろここ数年、九〇年代に入ってからのボンデージブームにより近かったように感じられる。それは秋吉の作品にシュールレアリズムの流れがあるのと同じ意味で、肉体的なエロスだけでなく、精神的なエロスであったと言うことが出来るからだと思う。
 秋吉は雑誌におけるイラストのほかに油彩をコツコツと描き溜めており、死後、一度だけ銀座の青木画廊で回顧展として発表されている。雑誌に発表された作品も晩年は編集者がアトリエを訪れ、保管されている油彩のなかから適当なものを選んでいたという話も聞いている。
 この時は美術手帳などにも特集が組まれ、初公開の油彩というように紹介されていたが、実のところそれらの多くは昭和四九年にでた『異端文学』という超マイナー誌の巻頭でカラーで紹介されたものである。秋吉の油彩はダリやキリコといった画家たちの世界に近い。が、彼らのように乾いてはおらず、日本的な感情によって創り上げられた秋吉ワールドがそこにはある。
 それにしても残念なのは秋吉 巒の画集が無いことだ。油彩作品は勿論のこと、『SMキング』『SM綺譚』などの雑誌の表紙を飾った作品、小説などの挿絵として描かれたモノクロ作品など、どこかでわずかでもまとめられないものだろうか。
〔おわり〕

初出/「TOWER」森海社刊・92年

追記・その後画集は刊行されている。が、まだまだ埋もれた作品は多い。

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» 私の奇人愛好癖 秋吉巒について [サブカル雑食手帳]
昨年、緊縛画家・伊藤晴雨について書いた時にも少し触れた ように、昔、古書店をまわっては古いカストリ雑誌を渉猟して いた頃、それらの雑誌群の中でもマニア色の強さと内容の豊富 さゆえに特に私が魅了されていたのが日本特集出版社発行の 「風俗草紙」誌であった。 最近..... [続きを読む]

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