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2005年5月18日 (水)

猫目ユウの、本大好き!

第三回〔幻想器械〕

 日影丈吉氏の作品を初めて読んだのは高校を卒業したばかりのころで、牧神社の「未刊行短編集」のうち『幻想器械』だけが神田のゾッキ本屋に並んでいるのを手に入れたのだった。
 推理小説というのが、どうにも肌に会わなくて、それまでまともに読んだことがなかったこともあって、幻想味のある日影氏の作品は新しい読書の楽しみを与えてくれたのを覚えている。
 そしてボクが決定的に日影丈吉ファンになったのは、その幻想味溢れる短編小説によってであった。丁度、この頃は現代教養文庫の「異色作家シリーズ」も完結し、久生十蘭や香山 滋らと共に日影丈吉傑作集も三冊が書店に並んでいた。これは一、二巻が短編集で、三巻が長編小説『内部の真実』であるが、ボクは二巻『猫の泉』の表題作「猫の泉」でもって日影ファンになったといっても過言ではない。またタイミング的にも講談社文庫から『幻想博物誌』が出たり、学芸書林の『恐怖博物誌』『幻想博物誌』が神田のゾッキ本屋を中心に古書店に出回っていた頃で、日影の短編を読む機会は多かった上に、何となく“復活”ムードで徳間書店から『咬まれた手』や『一丁倫敦殺人事件』などの書き下ろし長編推理も刊行された。さらにはそれらの解説などで氏の『ハイカラ右京探偵暦』が面白い事を知り、教養文庫で手に入れさっそく読んだが、なるほど面白かった。
 明治時代の私立探偵ハイカラ右京の活躍を描いた短編シリーズである本書は、日影氏の最初の単行本でもあった。明治期の東京を見事な描写力で書き上げているのは、氏が幼いころとはいえ、その頃の東京を少しでも知っていたというのが大きいだろう。探偵物や推理物のアンソロジーでは滅多に取り上げられないシリーズではあるが、じつは隠れた傑作短編シリーズである。
 何となく手に入るものは一通り手に入れてしまったような頃、ボクは神田の古書店でアルバイトを始めた。今はもう無い店だが、SFと推理に力を入れており、大分荒稼ぎしていた。そんな店だからボクが日影ファンだと洩らすとすぐさま日影丈吉の本が揃ってしまう。さすがに金銭的な事情もあって全て買うことは出来なかったが『夜の処刑者』や『非常階段』『現代忍者考』『夜は楽しむもの』といった、当時すでにお目にかからない本を何冊か買えた。中でも『イヌの記録』は「ハイカラ右京」と対を成す、現代版の探偵シリーズで、かなり面白かった。この本の面白さについては、日影氏の文庫の解説で金井美恵子氏が語っているほどなのだが、どうして文庫はおろか、何かの形で出しなおされないのか、不思議である。
 氏の代表長編推理のひとつ『真赤な子犬』も、初版の「桃源社書き下ろし推理小説」で手に入れた。後に東都書房や徳間書店で出しなおされているが、実はラストが大幅に書き足されている。ボクは桃源社版の方が好きなのだが、推理ファンには物足りないのかもしれない。
 エッセイも数点、文庫で出たものは読んだが、殆どは料理に関するものである。肩に力の入らない楽しい読み物で、こういう物から日影作品に入ってくる女性読者も多いのではなかろうか。日影氏はフランス料理の研究家でもあり『ふらんす料理への招待』はそういった氏の経験を生かしたエッセイ集であり、推理作家の一面を併せ持つ『ミステリー食事学』ミステリーファンへは『名探偵WOH’S WOH』がある。
 日影丈吉は九一年九月二二日、亡くなった。晩年においてもまだまだ筆に衰えもなく、『夢の藩種』や『泥汽車』などさらに幻想味豊かな作品を期待させる創作を発表していただけに残念である。あらためてご冥福を祈りたい。
〔終わり〕

初出/「TOWER」森海社刊・91年

追記・「国書刊行会」より『日影丈吉全集』が刊行されている。

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