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2005年5月18日 (水)

猫目ユウの、本大好き!

第二回〔吸血鬼!  吸血鬼〕

 すでにもう怪物、妖怪と言えば吸血鬼(ドラキュラ)かフランケンシュタインが誰の頭にも思い浮かぶだろう程、吸血鬼という言葉はポピュラーなものになってしまっている。もちろんこれは映画の影響大というところだが、それ以上に吸血鬼というキャラクター設定が人々にアピールするものだったということだろう。
 吸血鬼はみなさんもご存知のとおり、イギリスのブラム・ストーカーの長編小説『吸血鬼ドラキュラ』、またこれを原作とした映画によって全世界に知られることになった。もちろんストーカー以前にもジョン・ポリドリの短編小説『吸血鬼』があり、各地の吸血鬼伝説といったものもあったわけだが、やはり「ドラキュラ」という人名を吸血鬼の代名詞にまでしたストーカーを吸血鬼小説の代表格とみていいだろうし、一般的には吸血鬼小説の祖とも認じられている。
 ブラム・ストーカー以後『吸血鬼ドラキュラ』を踏まえた形、或いはまったく新しい形と様々な吸血鬼小説が書かれ、舞台にされ映画が作られていったわけだが、ボクがこれまでに読んだ中で特に気に入っている作品がふたつある。
 ひとつはドイツの作家ハンス・ハインツ・エーヴェルス(一八七一~一九四三)の『吸血鬼(ヴァンパイア)』(創土社・一九七六年八月一五日初版発行)である。
 この小説は著者の分身とも言うべき主人公フランク・ブラウン三部作の三作目である。内容は第一次大戦中の著者の経験などが色濃く、またヒトラーの登場を予見しているとも言われているが、吸血を一種の病気と見なしている点、純粋な吸血鬼文学とは言えないかもしれない。しかし物語中の吸血行為の扱いは見るべきものがあるし、作品全体の描写力、展開、ラストの余韻等、なぜこの作品が埋もれてしまっているのか疑問を抱かずにいられない。
 フランクは主に女性と同衾すると相手の血を吸ってしまうのだが(本人には自覚がない)、今なら血に対するフェティシズムだとか、その方面からのアプローチも面白いのではないか。また同衾した女性の一人、性的に解放されたプリマ歌手は、人間の内には様々な獣が棲んでいる、そしてフランクの内には「あなたは南京虫の魂をもっているのよ。あるいは蚤の魂を! あなたは蚊か--ひょっとしたら蜘蛛か蝙蝠--ともかく血を吸うものならなんでも、あなたなのよ!」と言い捨てるシーンがあるが、これも前述に関連して興味深いシーンである。
 さて、もうひとつは割合に新しく、翻訳は九〇年の秋に出た、ジョージ・R・R・マーティンの『フィーバードリーム(上・下)』(創元ノヴェルス 一九九〇年一一月九日初版発行)である。
 伝説や魔法がまだまだ力を持っていた中世から、科学万能の近代となり、吸血鬼はいかに生き残るか。そんな主題の上に、蒸気船「フィーバードリーム」号と船長アブナー、吸血鬼同士の主権闘争などを絡め、アメリカ・ミシシッピ川を舞台に展開する冒険ロマンである。とにかく面白い!
 またこの作品は、日本の若い読者に受け入れやすいモチーフが多い。といのも主人公の吸血鬼が美貌の青年であるとか、昼は暗い船室に閉じこもっているが、どうしても必要なときは外に出ることもできるとか、血の代わりに特製のワインを飲んでいるとか、つまり少女マンガでお馴染みの設定に近いのである。主人公であるジョシュアは自らの体験や研究により自分たち吸血鬼は人間とは体質の違った人種だと感じていたり、エーヴェルス同様、吸血鬼を科学的に解釈しようという試みも少しだけ見られる。さらには副主人公の船長、「フィーバードリーム」号自体が物語を大いに盛り上げてくれる。これほど面白い小説にはめったにお目にかかれない、おすすめ本であることは言うまでもない。

初出/「TOWER」森海社刊・91年

追記・『フィーバードリーム』の作者、ジョージ・R・R・マーティンの連作SF『タフの方舟』も最高に面白い。

                    

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コメント

沢登佳人・著「性倒錯の世界」(荒地出版社・絶版)を昔読んで、ヨーロッパ社会には性的フェティシズムとしての吸血鬼事件が多い事に驚かされた事を思い出しました。やはり文化と性倒錯の形態は密接に絡まりあっているようですね。

コメントありがとうございます。
『性倒錯の世界』、15年くらい前に読みました。懐かしいですね。
エーヴェルスの『吸血鬼』はそんな性倒錯的な雰囲気もあって、オススメです。
ちなみに『アルラウネ』、『魔法使いの弟子』等、3部作はどれも面白いです。

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