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ANOTHER STYLE について

  • : ANOTHER STYLE
    「ANOTHER STYLE」はフリーライターのグループ「涼風家(すずかぜや)」のメンバーによるWEBマガジンです。2010年4月21日より毎週水曜の更新で「ニューハーフという生き方」を連載開始。取材させていただけるニューハーフの方も募集しております。

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ANOTHER STYLE について

 かつて「TOWER」というミニコミ誌がありました。活字作品を中心にしたオールジャンルの創作同人誌で、80年代前半から約10年に渡って隔月刊行されていました。
 その「TOWER」が諸事情によって廃刊したあと、中心メンバーだった結城 涼は新たなミニコミ誌「ANOTHER STYLE」の企画に着手しました。
 しかし、結城とともに本企画を進めていた北山公治が急逝したため、創刊直前に企画はストップしたまま6年が過ぎました。
 今回の「ココログ」版「ANOTHER STYLE」はかつての企画とは違いますが、頓挫した企画のための準備のひとつとして結城 涼をはじめとするライターの作品を掲載していくつもりです。
 当面はさまざまなメディアに発表したものの再録が中心になるかと思いますが、ご支援のほど、ヨロシクお願いいたします。

2012年4月29日 (日)

電子書籍■夜の民

夜の民

 東京に住んでいても行ったことのない街、あるいはめったに行かない街がある。新宿や渋谷といった場所であれば買い物や映画、コンサートといった理由で出かけることも多いだろうが、とくにそういった施設のない街、地元の住民が買い物をするだけの商店街があるだけのような街には、友人・知人でも住んでいなければ足を向けることもない。
 そして総武線沿線のSというのがそういう街だった。
 もともと総武線沿線に生まれ育ったのでその駅は通学や通勤で毎日のように通りすぎていたのだが、そこで降りようとは考えたこともなかった。そう、大学時代の友人がその街に住んでいるのを知るときまで。
 友人は大学を卒業するまでその街のアパートに住んでいた。自分も含め何人かの仲間がその友人の部屋を訪れ、酒を飲んだり泊まったりしていて、自分も何度か…いやある時期は頻繁に世話になった。
 最寄り駅であるSの駅前には沿線でも特に大きなアーケードの商店街があり、飲食店も多く、周辺の駅や都内あるいは近郊から遊びに来る場所ではないのだが、地元住民にとっては十分に住みやすい街だった。
 駅近くの居酒屋で酒を飲み、終電を逃して友人の部屋に転がり込んだことも何度もあった。もっともいまとなっては懐かしい話しになってしまうのだが。
 そんなSに何年ぶりかで降りることになったのは、特別理由があったわけでもない。そういえば学生の頃にはよくここで飲んだっけ、といった少し感傷的な気分からだった。
 駅の南口が特に開けていて、駅前にロータリー、その向こうにアーケードの商店街が確か200メートル程続いていた。ロータリーを囲むように飲食店の入ったビルがいくつか立ち並び、アーケードに平行して路地のような「一番街」があり、ここにも立ち飲みやキャバクラといった店が並んでいた。
 時計は午後の8時を少し回っていた。ここで夕飯を食べていくかと考えていると、ふと思い当たることがあった。
「そういえばこの『一番街』にうまいとんかつ屋があったけど…」
 そんなことを思い出しながら歩いてみると、学生時代に見知った店の大半は看板が掛け替えられていたが、とんかつ屋は以前のままあった。
 戸を開けて中に入ると「いらっしゃいませ」という元気な奥さんの声に迎えられる。これもあの頃のままだ。入り口に近いカウンター席に座りロースとんかつの定食を注文し、ぐるっと店内を見回してみても壁にかけられたものやテーブルの上の調味料のたぐいなども変わっていないようだった。強いて言えばブラウン管だった棚の上のテレビが液晶の薄型になっているくらいか。

 続きは電子書籍で。
 「真夜中の彷徨」という作品を大幅に加筆し、改題したものです。

2012年4月28日 (土)

電子書籍■凍える街~冬紀元より~

凍える街~冬紀元より

 見上げるとどんよりとした雲が空を覆っていた。いまにも雨が降りだしてきそうな感じがする。
 街路樹はみな葉を落として、裸になった枝が冬の寒さを際立たせている。
 別に何か目的があったわけではないのだが、週末の午後、フラリとこの街に足が向いてしまった。ついこのあいだまでは週末ごとにあいつと歩いたこの街に。
 すれ違う人たち。雑踏の中に身を置くだけでも少しは気持ちが紛れるような気がしていたのだけれど、心の中を占めるあいつの面影は、その大きさを変えてはくれない。
 意識はしていないのに、いや無意識に歩いているからこそ、ふたりでよく歩いた道を、ふたりでよく入った店の前に、足が向いてしまう。それに気づくたびにチクリと心が痛む。
 そんな心境を煽るように木枯らしが吹き抜けていく。
 季節は変わることなく巡っていくけれど、もしかしたらこの冬は終わることはなく、春はやってこないのではないか、とそんなことも考えてしまう。自分でも感傷的だと思いながら。

 あの日、あいつと口論をした店の前を通り掛かり、少し躊躇したものの、気がつけばドアを開いていた。
 レンガの壁に木製のカウンター。コーヒーの香りもあの日と同じだ。
 あの日座った奥のテーブルは今日も空いていた。まっすぐそこに向かうと椅子に腰掛けコーヒーを注文する。タバコに火をつけて目を閉じると、あの日テーブルの向こうに座っていたあいつの姿が瞼の裏に浮かんでくる。
 なにがキッカケで口論になったのか、いまではハッキリと思い出すこともできない。些細なことで意地を張ってしまったように思う。それがあいつとの別れにつながることなど少しも思わずに。

 続きは電子書籍で。

2012年4月27日 (金)

電子書籍■幻想掌編小説・少女~連作ショートショート小説~

眠れる少女■連作ショートショート/少女・1

 夜、寝る前に一杯の酒を飲むのがわたしの楽しみだ。いわゆる寝酒、ナイトキャップとかいうやつだ。もともと酒が強い方ではないから、ビールだったら350ミリリットルひと缶で十分。500ミリリットルでは多すぎるというところだ。量は飲まない、いや飲めないとはいえ酒は好きなのでいろいろな種類のものを飲んでいる。最近ではモルトウィスキーが好みだ。そんなわけでその夜もロックグラスに、店で飲んだらダブルほどの量を注いで、冷凍庫から氷を出してグラスに3、4コ入れたのだった。
 そのグラスを持ってベッドに行き、ベッドサイドのスタンドの明かりで本を読みながらチビチビと酒を飲む。30分もすると眠くなって、そのまま寝るというのがいつものことだった。しかしその夜はちょっと違っていた。ベッドに腰掛け、本を膝の上に乗せ、まずはひと口、とグラスを手にしたときに、グラスの中にチラリと黒い陰が目に入ったのだ。最初はなにかゴミが入ったかと思い、じっとみてみると、どうも氷の中にその陰はあるらしい。冷凍庫に製氷機を入れる前にゴミが混じったか、と思ったのだが、よくよくみているとその黒い陰はどうも何かの形をしている。酒と氷で像がゆがんで見えるだけかとも思ったのだが、グラスの上から、横から角度を変えていろいろ見てみても、それはひとの形に見えるのだ。

 続きは電子書籍で。
 眠れる少女、雪の日の少女、雨に濡れた少女、の3編を収録。

2012年4月26日 (木)

電子書籍■目覚まし時計~連作ショートショート・時計~

目覚まし時計~連作ショートショート・時計~

 あと数時間で今年も終わる。
 テレビではアナウンサーがまた同じことを言っている。あと6時間、あと5時間、うんざりするが今日はそういう日だ。
 大晦日の夜はひとりで過ごすことにしてから何年経っただろう。カウントダウンパーティーのようなにぎやかな場所ではなく、自室でゆっくり一年を振り返りつつ新しい年を迎えるのが恒例となってしまった。
 そういえばここ数年は同じように過ごしてもなにか落ち着かない気分も感じていた。
 というのも、年末に帰省してくる友人と毎年年も押し迫った29日、30日といった日程で会うのが、これも恒例となっていたのだが、一昨年あたりから相手の都合で会えなくなり、今年はどうだろうと連絡を待っているうちにその日が来てしまい、大晦日になってしまうという感じで気持ちの整理がつかないせいかもしれない。

 続きは電子書籍で。

2012年4月25日 (水)

電子書籍■懐中時計~連作ショートショート・時計~

連作ショートショート■時計~懐中時計

 その時計をいつ、どこで手に入れたのか、いまではすっかり忘れてしまって思い出すことができない。
 中学、高校のころには腕時計がカッコよく思えて、外出するときにはかならず付けていたものだが、20歳のころにはそんな気分でもなくなり、自宅の机のうえにほったらかしにしてしまった。
 一度習慣でなくなると、たまに付ける腕時計がやけに重く感じられ、ますます付けなくなっていった。そんなこともあって、しばらく経ってから持ち歩くようになったのが、懐中時計だった。
 ゼンマイ式でアナログのそれは、小振りで、大きいとは言えない自分の手のひらの中にすっぽり収まるところも気に入っていた。
 ボディは金メッキ、カバーはプラスチックだから、露天で安いものを買ったのかもしれない。いつどこで手に入れたのかも忘れてしまったが、そんな懐中時計を何年間か、毎日身につけ大事にしていたものだ。しかし、あるときチェーンが切れてしまい、修理しないまま、机の引き出しに放り込んで、そのままになってしまった。
 何度か引っ越しもして、引き出しの中身を全部だしてこともあったのだが、時計はまた引き出しの中に戻され、何年も同じようにしまわれていたのだった。
「あ、こんなところに」
 引き出しの奥から出てきた懐中時計を見て、思わずつぶやいていた。
 メッキもところどころはがれ、カバーのプラスチックにも小さな傷がいくつもついている。大事に使っていたつもりだったが、ときには乱暴にも扱っていたのだろう。
 懐かしさと同時に、この時計を持ち歩いていたころの記憶が蘇ってくる。
 当時つき合っていた彼女はいまどうしているだろうか。
 ゆっくり、時計のゼンマイを回してみる。
 キリキリキリ。
 秒針が正確な動きを始める。
 キリキリキリ。
 さらにゼンマイを巻く。
 ギリッ。
 いやな音がすると同時に秒針が止まった。
 ゼンマイが切れたようだ。
 時計の針はそのまま同じ場所から動くことはなかった。
 過去は過去のまま、そっとしておいた方がよかったのかもしれない。無理やり引き戻そうとしたことを後悔した。

2012年4月24日 (火)

電子書籍■伝説のブルセラショップ・オリジナル・ビデオ(3)

 伝説となった、ブルセラショップ・オリジナル・ビデオが、発売当時に作品を紹介した雑誌の記事で蘇ります。

電子書籍■雪降る街の、夜の出来事

雪ふる街の、夜の出来事

 夕方降りだした雪は、夜になってもやむ気配はなく、街を白く染めてゆく。天気予報は大雪注意報が発令されたといって、明日の朝までの積雪予想を心配げな口調で繰り返している。雪に慣れない都会では、五センチの積雪で交通が麻痺してしまう。どうやら明日の朝、電車は運行できそうにないらしい。
 日付はもう変わろうという時刻、普段なら車も人影もまだまだ絶えはしないが、今夜ばかりはその気配も感じられない。道路のアスファルトは積もった雪に埋め尽くされ、街並みはどこか見知らぬ土地のように感じられた。
 サクサクサクサク、と雪のなかを小走りに行く若い男の陰が、街灯の明かりを横切る。黒い革ジャン、ジーンズに革手袋。その右手に光るのはナイフだろうか。顔はフルフェイスのヘルメットによって隠され定かではないが、荒い息づかいは走っているためばかりではなさそうだった。

 続きは電子書籍で。

2012年4月23日 (月)

電子書籍■伝説のブルセラショップ・オリジナル・ビデオ(2)

 いまや幻とも言える、ブルセラショップのオリジナルビデオ。発売当時に作品を紹介した雑誌の記事で蘇ります。

電子書籍■内なる波音

内なる波音

     1

 それがいつのことからか、ハッキリとは覚えてはいなかったが、ある夜床に就いた彼の耳に、どこか遠い波音が静かに響いてくることに気づいたのが始まりだった、と思う。
 時計の針は午前一時を少し過ぎた頃だったが、普段から就寝はその時刻に近くなってしまいがちだった。彼の住む部屋はありきたりなワンルームマンションで、窓から見える風景といっても、向かいのビルや近所の家々の屋根、三階下を走るあまり広くない道路とそこを行き交う人と車といったところで、海はおろか川にしたところで歩いて三十分も離れている。そんな環境に暮らす彼の耳に或る夜聞こえてきた波音を、他の、そう例えば車のエンジン音やステレオのノイズととっさに取り違えても無理からぬことだ、と恐らくは同情心を半ばに弁護されてしかるべきだろう。しかも彼が海国育ちで、都会へと出てきたのではなく生まれも育ちも都会の真ん中、遊び相手はコンクリートの壁だったと聞けば哀れみは一層深まるかも知れない。そういったことはともかく、ありきたりなワンルームに置かれた、これも家具売場には珍しくない型のベッドの上で彼はその波音を聞くともなしに聞いていたのだった。時間にしてどれくらいの間そうしていただろうか。すでに眠ろうとしていた彼の意識に波音は休むことなく一定のリズムで繰り返し、やがて彼をいつにも増して心地好い眠りへと導いていった。眠りに落ちる前、彼は波音というものが生命のリズムを想わせるのに充分なものだという、生命の源流を海と信ずるに足る確信を持てたような気がしていた。
 翌日も翌々日も彼が床に就くと波音は聞こえてきた。ザン、ザザン、という繰り返しがその度に彼を眠りへと誘い、朝の目覚めもそれまでとは違い爽やかであった。しかし波音が続くにつれ、ある不安も芽生えてきた。それは自分が幻聴を聞いているのではないかというものであったが、当の海は遠く、ほかに考えられる音源も見当たらないとなれば誰でも一度は考えてみるようなことではある。道路や地下鉄の工事を深夜に行うというのも少なくはないがこの辺ではそういった話も聞かない。だいたい音の種類自体が違う。隣や階上、階下のどこかの部屋で環境音楽でも流しているのかとも思ったが、どうして安い割りには防音だけはしっかりした建物であった。第一もっと早い時間にTVやステレオの音が響いてこないのだからこれも違うだろう。いったい何の音なのか、彼は波音の原因に思い当たるまで眠れそうに無い自分に気がついた。

 続きは電子書籍で。

2012年4月22日 (日)

電子書籍■伝説のブルセラショップ・オリジナル・ビデオ(1)

 かつて、ブルセラ・ショップの店頭や通販で売られていた、オリジナル・アダルト・ビデオ。いまでは伝説となってしまったそれらの作品を、発売当時に紹介した雑誌の記事で振り返ります。

電子書籍■降り積もる雪のように

降り積もる雪のように 

 地球から射手座方向に二十三万五千光年、地球の太陽と同じG型恒星を主星とする第四惑星「アクアマリン」。その名前は地球のように碧く輝いていたことからつけられ、人類の移住・植民の可能な惑星の中でも第一番に数えられる。
 最初に発見された時、それは全くの偶然だった。
 理論上その開発が確実であった時空間跳躍装置がようやく完成し、それを積んだ三隻目のシャトルの実験航行中、単純な操作ミスからシャトルはまったく見知らぬ宇宙空間に放り出された。乗務員はそこに、太陽と良く似た恒星を発見したが、コンピュータが示していたのは太陽系から二十三万五千光年を隔てた宇宙であった。
 シャトルの報告を受け、また、時空間跳躍装置の本格実用の時代が訪れ、宇宙植民、宇宙移住がクローズアップされたことで、太陽と良く似た恒星は一挙に注目されることになった。
 アクアマリンに初めて足跡を残したのは--------------------。
「もう、用がないわよ、こんな記録テープ」リサがブロンドの髪をかきあげながら立ち上がり、ヴィデオのスイッチを切った。
「だから、最後にもう一度見ておきたいんだ」少しはなれてソファに腰掛けているユウジが溜め息まじりに言う。
「年より臭いわね。ノスタルジーってわけ」
「君とは五才は違わなかったはずだ」
「そうかしら。三十前には見えないけどな」リサは言い放つとヴィデオのリモコンをユウジの方へ放って、部屋を出ていった。
 ダイニングルームにはマサヨが食事の支度に係きりになっている。彼女もユウジ同様実際の年令よりは老けてみえた。けれどリサと同い年だから二十一になったばかり。リサは自分も彼女のように老けてみえるのだろうかと思うと神経がささくれだつのがわかった。

 続きは電子書籍で。

2012年4月21日 (土)

電子書籍■ニューハーフという生き方(6)

 雑誌「シーメール白書」に連載したニューハーフへのインタビューシリーズ「ニューハーフという生き方/激白人生」の電子書籍を「ブクログのパブー」から発売中しています。第6巻には、浜崎洋美、聖めぐ、叶くみの3人を収録。

電子書籍■SINGLE LOVE

SINGLE LOVE/以 心 伝 心 ・ Ⅰ

 あの人と初めて会ったのは吉祥寺のライヴハウスだった。あたしはあんまりそういう場所へ出かけていくことがなかったけど、その日は友達のミヤに誘われて、ミヤがひいきにしているというジャズバンドを聴きにいった。ミヤとは高校時代の友人で、卒業後はお互い違う大学に通ってはいるが月に一回か二ヵ月に一回は会っていた。ライヴハウスに入ると、ミヤの彼が先に来ていてテーブルをキープしておいてくれた。そこには彼の友達という、あの人がいた。ミヤの彼氏とは以前に二、三度会ったことがあったけど、あの人とはその時が初めてだった。ミヤとあたしが席に着くとミヤの彼--鈴木くんが、まずあの人を紹介してくれた。「どうも」と軽く頭を下げたあの人と、その瞬間目が合い、あたしの背筋に稲妻のようなショックが走ってその目をじっと見つめたまま動けなくなってしまった。あの人の目の奥にも何か鋭い光りが走るのを見た気がする。いえ、あたしは確かに見たのだと言い切ることが出来る。ライヴハウスの片隅に座っているあたし達ふたりは、その時、時間も空間も越えてお互いを判りあえる存在になったのだから。あの人が目の奥で言っている。「周りの者に気づかれちゃダメだ。僕たちがこんなに深く判りあえるのを」「わかってる」あたしも目で答えて、ミヤの方に顔を戻す。ミヤも鈴木くんもそんなあたし達には気づいていない。ただ薄笑いで場を取り繕っているだけ。あの人もそれに合わせて笑い返すけど、ほら、あたしには判る。あの人の目はもうあたし以外の誰をも見てはいない。

 続きは電子書籍で。

2012年4月20日 (金)

電子書籍■ニューハーフという生き方(5)

 雑誌「シーメール白書」に連載したニューハーフへのインタビューシリーズ「ニューハーフという生き方/激白人生」の電子書籍を「ブクログのパブー」から発売中しています。第5巻には、岡田早苗、五十嵐みゆき、落合京子を収録。

電子書籍■強い風の日に

強い風の日に

 街路樹が強風に吹き飛ばされそうだ。私はそんな外の風景をファーストフード店の中から眺めていた。何かを考えよるような時、一人でどこかに腰掛けようと思うとき、最初に思いつくのは喫茶店だが、実際自分の世界に没頭できるのはファーストフード店のカウンター席であることが多い。それだけ私に合う、好みの喫茶店や、落ちつける店が減ったのだろうと思うのだが、店の雰囲気が変わってゆくのは時代のニーズであるから、単に私が老けただけなのかも知れない。
 今年で三十代も最後になる。毎年、歳の事は意識していたが、実際歳相応に精神は老けては来なかったと、一種誇りのようなものも持ってはいる。出版やイベントのプランナーとして十代後半から二十代前半の若者を相手に今まで仕事をこなしてきた自信とも言うべきものだ。
 いや、それらはすでに過去にすぎない。今の私はただの疲れたオジさんだ。
 風はますます強く吹きつけている。上空ではゴウと唸りを上げ、私の目の前のウィンドウはビュウと吹きつける風に心なし歪んで見える。
 どんよりとした重苦しい雲が天を覆い、強風に流されている。台風が近づいているのだ。今夜には本州のどこだかに上陸するらしい。
 夜にはまだ早く、雨も未だ降り始めてはいないが、こんな天候のせいで店内は閑散としている。三分の一程埋まっていたテーブルやカウンター席も、いつの間にか殆どが空いてしまっていた。店員たちの雑談も早く帰宅したいの繰り返しだ。
 私はそんな世間とはどこか切り離されているような気持ちで窓外を眺め、珈琲を啜りつづけている。例え嵐のなかを歩くことになろうとも構いはしない。今日はそんな気分なのだ。

 続きは電子書籍で。

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